『水を縫う』を読み終えて

４月２日(日)、どうも中日は今年も打てなさそう。
そして選手がみんな小さくて細い。怖そうな選手もいない。
今年も春先だけであーあ、と、なりそうな気配がする。


庭梅は、毎年間違いなくパーっと咲いてくれる。



寺地はるな『水を縫う』(集英社)を読了。
初めて接した作家の作品で感ずるものがあったときはだいたい連続してもう一つ読むことにしている。
本作は主人公である高校一年生の清澄(きよすみ)が、姉の水青(みお)のウェデイングドレスを作ってあげるというだけの簡単なストーリー。ところがこれがなかなかなか読ませるもので名作だった。男の子なのに小さいころから手芸に興味を覚え特に刺繍が好きな清澄。一方、水青は幼い頃の体験から女の子なのに「かわいい」と言われたり、かわいく見られることが嫌い。結婚式もあげたくないくらい。離婚した母さつ子は、市役所に勤務しつつ2人を育て「普通」に教育することで精一杯だった。家族がギクシャクしないようにホローしていたのが祖母の文枝。水青は派手な飾りのウェデイングドレスが嫌いでシンプルなのがよいという。そんな姉のために清澄がウェデイングドレスを作ってあげると言う。
母のさつ子からすると世間的に普通であって欲しいのだがうまくいかない。
清澄も結局は姉が思っているようなウェデイングドレスを作ることができず、たまに会っている父の全(ぜん)に応援を頼む。全はプロの服飾デザイナーなのだが普通の社会人としての良識がない人。今更父だからといって娘のドレスは作ることはできないと断る。困り果てた清澄は父の友人であり雇用主でもある黒田さんから父を動かしてもらった。詳しい内容を聞いた全は、「本人が着とって落ち着かんような服はあかん」と、吸湿性に優れ重ねれば暖かいガーゼの生地を選んで体に巻き付け、つまんだり折りたたんだりしてギャザーやプリーツを作りあげて、ピンで留めていく。瞬く間にドレスのかたちに変化した。水青も納得した。その後そのドレスに清澄が独りで白糸と銀の糸の針を入れ、流れる水のような刺繍を入れ(縫っ)た。流れる水は淀みがないということ。
最後は、出来上がったウェデイングドレスをみんなが感嘆の目で見るであろうというシーンで終わる。
男は男らしく、女は女らしく普通であることって何なんだ、を問うている作品。
著者は多くの部分を接続詞なしの短い文で書いているのだが、決して無理をすることなく上手くつないでいるのが印象的。また６章からなる各章を清澄、水青、紺野(婚約者)、文枝、黒田、全にそれぞれを語らせて話を進めていた。特に最終章のウェデイングドレスが出来上がったシーンの描写は感動的であった。
もう一冊読んでみたくなる作家だ。


今月の盆栽カレンダー。

一位　樹齢約120年　　添え　オトメキキョウ

　　山姫も花の衣ぬぐ卯月かな　　宗砌

コメント 12

こんにちは。
中日、伸び盛りの若手選手がいるので、これからだと思います。
巨人、若手選手いなくてベテランばかり、将来性・未来なしです。
「水を縫う」今話題になっているジェンダー問題に通じる印象です。
また「出来上がったウェデイングドレス」見たくなりました！？(=^･ｪ･^=）
by Boss365 (2023-04-02 22:10) 

体調が悪いとき、落ちているときは、本を読もうという気も置きません。このところwildさんは順調に回復していると思います。
こちらは、坂本龍一さんの訃報を知り、今、YouTubeで彼の曲を聞いているところです。
by アニマルボイス (2023-04-02 23:12) 

男の子だけど刺繍が好きなのも、女の子だけど
可愛く見られたくないのも、片親だからと言われ
ないように（多分）普通に育てようとする母親も
分かるけど、父親には「いや、それは作れば
いいじゃん」となりました(;^ω^)
読んでみたくなる本ですね。

by みずき (2023-04-02 23:18) 

日常が戻ってきたようですね。
なによりです。
今日は花見に出かけます。
by 夏炉冬扇 (2023-04-03 06:33) 

Boss365様
若手が成長するまでこちらが我慢できるのかが問題なのよー。
巨人の選手には怖さがあります。

まさにジェンダー問題ですね。
by wildboar (2023-04-03 10:53) 

アニマルボイス様
ご診察ありがとうございます。
明日は近医の診察日です。
坂本さんも大変な闘病生活でしたねえ。
by wildboar (2023-04-03 11:06) 

みずき様
けっこう読ませてくれましたよ。
by wildboar (2023-04-03 11:07) 

夏炉冬扇様
みんなで花見いいですねえ。
保存会便りありがとうございました。
by wildboar (2023-04-03 11:09) 

中日は駄目でも庭梅は頑張って咲いてくれますね。
ウェデイングドレスは人によって好みがありますから難しいですね。
by お散歩爺 (2023-04-03 12:58) 

野球に読書と忙しいですね(^^
私は一昨年から大谷の大リーグ中継に熱中してしまって
日本のプロ野球をあまり観なくなってしまいました。
やっぱり怖そうな選手がいないと物足りないですね。
昔、巨人を応援していた頃、長嶋、王に対する星野さんの
気迫はすごかったですね。敵ながら惚れ惚れしました(^^

by プー太の父 (2023-04-04 05:34) 

お散歩爺様
中日ファンとしては今年こそはと期待していましたが・・・。
by wildboar (2023-04-04 12:52) 

プー太の父様
星野監督のようなスタイルは時代にそぐわないということでしょうねえ。
by wildboar (2023-04-04 12:54)